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今年狙われる重要判例
民法15 (5/3)
(最判平13.3.13=H13重判・民法15=判例六法・719条5番)

 本事件の被害者は、最初に交通事故により負傷し、その後、治療を受けた病院で適切な治療がなされなかったため、結果的に死亡した。
 このような、被害者をはねた自動車運転者の不法行為と、治療者の不法行為とが競合した事例につき、共同不法行為(719条)となるか、各加害者の責任がどうなるか、問題となった。

[参考]
民法719条1項本文
   数人が共同の不法行為に因りて他人に損害を加へたるときは各自連帯にて其賠償の責に任ず。
722条2項
   被害者に過失ありたるときは裁判所は損害賠償の額を定むるに付き之を斟酌することを得。
【論点】
 交通事故と医療事故の順次競合と共同不法行為(719条)

【判旨】
「原審の確定した事実関係によれば、本件交通事故により、優作は放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの、事故後搬入された被上告人病院において、優作に対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもって優作を救命できたということができるから、本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、優作の死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。
 したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。
 本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。
 けだし、共同不法行為によって被害者の被った損害は、各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして、各不法行為者はその全額を負担すべきものであり、各不法行為者が賠償すべき損害額を案分、限定することは連帯関係を免除することとなり、共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し、これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり、損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。
 したがって原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由がある。

4 本件は、本件交通事故と本件医療事故という加害者及び侵害行為を異にする二つの不法行為が順次競合した共同不法行為であり、各不法行為については加害者及び被害者の過失の内容も別異の性質を有するものである。
 ところで、過失相殺は不法行為により生じた損害について加害者と被害者との間においてそれぞれの過失の割合を基準にして相対的な負担の公平を図る制度であるから、本件のような共同不法行為においても、過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしん酌して過失相殺をすることは許されない
 本件において被上告人の負担すべき損害額は、優作の死亡による上告人らの損害の全額(弁護士費用を除く。)である4078万8076円につき被害者側の過失を1割として過失相殺による減額をした3670万9268円から上告補助参加人川越乗用自動車株式会社から葬儀費用として支払を受けた50万円を控除し、これに弁護士費用相当額180万円を加算した3800万9268円となる。したがって、上告人ら各自の請求できる損害額は、この2分の1である1900万4634円となる。

5 以上によれば、上告人らの本件請求は、各自1900万4634円及びうち1810万4634円に対する本件医療事故の後である昭和63年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないから棄却すべきである。したがって、これと異なる原判決は、主文第1項のとおり変更するのが相当である。」

【判例のポイント】
1.本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負う。
2.本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されない。
3.過失相殺は不法行為により生じた損害について加害者と被害者との間においてそれぞれの過失の割合を基準にして相対的な負担の公平を図る制度であるから、本件のような共同不法行為においても、過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしん酌して過失相殺をすることは許されない。

【ワンポイントレッスン】
 今回の最高裁判決は、交通事故と医療事故が順次競合した場合にも、共同不法行為(719条)が成立し、各加害者が連帯して損害の「全部」について責任を負うとした。
 原審の東京高裁が、各加害者の寄与度に応じた責任を認めたのに対して、そのような責任の分別を否定した点が注目される。

 交通事故とその後の医療事故は、時間・場所も異なるし、各加害者が示し合わせて悪さをしたわけでもないので、「共同不法行為」というのはかなり強引だが、被害者を手厚く保護するという結論が先にあったと思われる。

【試験対策上の注意点】
 共同不法行為(719条)の問題で出題される可能性がある。過失相殺にも注意。

(大剛寺)

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